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理不尽で美しい

 基本人間も生き物ですから弱いものや小さいものを捕食したりより多くの繁殖行 動をしたいという本能が働いているのですが、更に面倒臭いことに人間は「人より 優れていたい」とか「特別でありたい」といったような欲求もありまして、その点 で他の動物などより非常にタチの悪い存在となっております。

 そういった現代社会における本能に忠実な方々の中には、生まれる時代を間違え て中世暗黑時代で戦争ばかりしている生活の方が向いているのではないかと思われ る方もおりますが、昨今パワハラやセクハラなど人間関係における嫌がらせにおい て世間の風当たりが相当強くなっているので生き辛いことになっているのではない かと思います。

 しかし自分の絵画のモチーフとしましては、そういった関係性というのは非常に 興味深いものがありまして、中でも暴力による優位性の確立という人間関係や一般 常識の中にある暴力というものは表現のし甲斐があるものであると思います。

 例えば私がまだ幼かった90年代。ボチボチとDVが社会問題化してきた頃、ニュース番組での小さな特集で亭主の暴力に耐えかねた女性が駆け込んだ警察署で、 ただの痴話喧嘩扱いされた上に対応した男性警察官が被害女性に言い放った言葉 が、

「そら私かて女房が言うコト聞かなんだらブン殴りもしますがな。」

という非常に心ないもので、その話を聞いた私は不快感と同時におそらく良い警察 官として定年まで勤め上げるであろうと思われるこの男性警察官が持つ一般常識の 中にある暴力と狂気に人間の真理を感じ、それを得た事に快感を覚えました。絵画 を制作するようになってあらためてその事を思い出し、この理不尽な状況をモチー フにして美しく描き上げたらどうであろうかと考えましたが、これを絵画での表現 というのは非常に難しく、難儀している有り様です。

 正直このモチーフで制作される絵画が一般的に見て面白いかどうか自分でも分か らないのですが、それだけに手を抜かずに描いており、貧乏しても成功するまで続 けようという自分の中で人生をかけたライフワークとして進めていこうと考えてお ります。

2018年度美学校生徒本間洋